マルホランド・ドライブ (2001) Review 周りの友人,ネット上の友人,双方から絶賛と駄作,評価が割れまくってる,リンチ監督の代表作【マルホランド・ドライブ】を怖いもの見たさで観てみましたよ!
ジャンルの枠を超え映画の枠をも打ち壊すかのような一本でした。
テーマは,自らが言葉で語るのはナンセンス,作品自体が語るんだと言い放つリンチ監督ですが,観賞後その通りだと感服してしまいました。抜群のアイデアを持っていても,映像として形に残すのは,また別物でしょうが,解釈が難解でありながらも,夢と現実に生きるヒロイン(ナオミ・ワッツ)の行動と感情のもつれが,抽象的ながらも,きっちり理解できる究極のバランスに仕上がっています。
【マルホランド・ドライブ】は,ダイアン(ナオミ・ワッツ)の夢(走馬灯の様に流れるタイプかと)と,覆したい現実を解答編として置き,2つのパートで成り立ってます。夢と現実の行き来は,一度だけなので境界線を把握できれば物語の全体像と監督の狙いも見えてきます。
夢を見ると,現実とは多少異なる事実や造形であっても,それを夢の世界では真実と疑わない心地良い期間があります。
時には,ダイアンがウィンキーズの店員ベティのネームプレートを見て夢の中では,自分の名前をベティと勘違いしても不思議ではないし,容姿や性格,置かれてる環境などを美化した形で表されても,夢である以上は,文句は言えないし納得です。悪夢で無い限り夢の中では,ある程度の自由があるのかも?眠る寸前に深く頭に刻み込んだ単語や情景が,夢に採用されることも多いように思えます。
ダイアンには,マルホランド・ドライブこの場所が,最大のショックが巻き起こった場所に違いなく,怒りや憎しみ・悲しみなどの,負の感情を,大クラッシュという最悪な事態にまとめたのだと,大体あの事故で五体満足で生き抜くのは,不可能に思えるので,この時点で現実世界とのギャップをちらつかせ夢もしくは,幻想であるかの様なヒントを提供してくれます。
誰もが永遠に夢見心地のまま居られる訳もなく,現実で強烈に印象深い物体や出来事に夢が進んだ時に違和感と共に覚醒を促すキッカケが生まれ意識が否応無しに引き戻されますが,
ダイアンの場合には劇場にて潜在意識の現れのような歌の歌詞 (執拗に繰り返される,楽団は居ない・何もかもまやかしetc) により,此処は現実ではない幻想なんだと促され,青い小箱を開けた瞬間に,カミーラの死を思いだし覚醒したのでしょう。青い小箱の中身が入って無いのは,現実世界で青い小箱が存在せず,存在しない物の中身など知る由もないからで…
大事なのは,青い鍵なのでしょう。青い鍵は,暗殺者との契約で暗殺成功の証。ダイアンは,青い鍵で何が施錠されていたのかが,聞かされてなかったから,夢の世界では,青い鍵のセットに青い小箱を連想したのだと。
カウボーイは,現実世界のマルホランド・ドライブで行われたカミーラのパーティーに一瞬だけ登場しますが,ダイアンは彼を覚えていて夢の世界では,恐らくあからさまな裏切り行為にでたカミーラの次に憎い新鋭監督のアダムに,せめて夢の中だけでも,自分の存在を存分に植え付け脅迫に似た警告を与えて多少なりとも苦痛を与えたりしたいとの欲求を性格の良いキャラのベティに言えないセリフを流す代弁役と,ダイアン目線から切り離された時のストーリーテラーとして活用。もちろんカウボーイも,夢の中では,ダイアンの思考の一部であるから彼自身もダイアン何でしょうけど,ダイアンは無意識下で夢の辻褄を合わせたのかも,ダイアン自身がダイアンを 『べっぴんさん目覚める時間だと』 起こすのは,変ですからね。カウボーイは,最もダイアンの潜在意識に近い夢中の創作物だと解釈。
その他の登場人物として,オープニングのベティを騙す詐欺師の類いと思われる老夫婦。ウィンキーズにて現れる黒い顔の男。前者は,ダイアンのカミーラの殺害に対する罪悪感の象徴で,後者も夢のウィンキーズで男が姿を見てショック死したように,死と恐怖が,まがまがしい存在として君臨したのでしょう。
問題は,ダイアンがかえりみた夢は,引き金を引く前か,以降なのかといういうことですが,ラストシーンに登場する老夫婦や黒い顔の男が,夢の世界に登場することから,ダイアンが罪の意識に耐えかね引き金を引く刹那が,永遠に感じられる夢では無いでしょうか?
まさか死体と化してから,回想したって話では無いと思いますが…
直接ストーリーに絡まないアダムの受難なども,ショートムービーとして考えると面白いです。カミーラは,アダムの他に本命の彼女が居るにしても,恋敵である以上は,脳内でボコボコくらいの処置は妥当でしょう!
また,リンチ監督作品【ロスト・ハイウェイ】【インランド・エンパイア】も観たくなりました。
私的評価marvelous STORY 真夜中のマルホランド・ドライブ。車の助手席に座る女(ローラ・エレナ・ハリング)は、突如運転手に殺されそうになり、車は事故を起こす。傷を追い逃げた女は、高級アパートの一室に忍び込んで身を隠す。部屋の住人である叔母を訪ねてハリウッドにやってきた女優志望のベティ(ナオミ・ワッツ)は、部屋にいたリタと名乗る記憶喪失の女を叔母の友人と思い込んでしまう。大金と不思議な形の青い鍵を持つリタが、唯一覚えている言葉「マルホランド・ドライブ」を手がかりに、彼女の記憶探しに乗り出すベティ。一方、ベティはオーディションが大成功。新進監督のアダム(ジャスティン・セロウ)と知り合い、惹かれ合う。
CAST デヴィッド・リンチ 監督・脚本
ナオミ・ワッツ (ベティ・エルムス/ダイアン・セルウィン)
ローラ・エレナ・ハリング (リタ/カミーラ・ローズ)
アン・ミラー (ココ)
ジャスティン・セロー (アダム・ケシャー)
原題 MULHOLLAND DRIVE 上映時間 146分
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